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強制反復(タイムトラベル)

比率 1:1:0

台本を使う前に【利用上のルール】をお読みください。

悠馬(♂)

真由(♀)

 

悠馬M(しとしとと降る細やかな雨。
    俺はとある場末のバーに居た。
    何故かここに来なければならない気がしていたからだ)

真由「隣、座っていい?」

悠馬「え? あ、はい」

真由「ありがと」

(間)

真由「どうして俺なんかと一緒に飲みたいと思ったんだろう。
   そう思ったでしょ」

悠馬M(思っていることを的中されて、目を丸くした)

真由「私の恩人に似てるからよ」

悠馬「恩人……ですか?」

真由「そう。迷って悩んでいたのよ。ここにそっくりのバーでね」

悠馬「ここではなかったんですか?」

真由「どうなのかしら、こことも言えるしそうじゃないとも言えるわ」

悠馬「なんだかややこしいですね」

真由「ふふっ、深く考えなくてもいいことかもしれないわね」

悠馬M(その笑顔にどこか懐かしさともいう何かを感じた。
    昔から知っているような、これから知るような
    不思議な気持ちだったが、同時に安心感もある)

悠馬「そうですね」

真由「あの人の笑顔にやっぱり似てるわ」

悠馬「へぇ、もしかしてそっくりさん?」

真由「そうかもしれないけど、年齢はだいぶ違うんじゃないかしら」

悠馬「似てるのに?」

真由「そ。10年前に出会ったんだけどね。
   彼はその時30は超えてたんじゃないかしら」

悠馬「俺はまだ23ですよ?」

真由「面影っていうとなんか逆の意味かもしれないけど、
   彼の若い頃はこうだったんだろうなってね」

悠馬「ふぅん。歳を重ねた俺かぁ、想像できんなぁ」

真由「あら、結構カッコよかったわよ?」

悠馬「ほほぅ。今の俺は?」

真由「カッコイイっていうよりは、かわいいって感じかな」

悠馬「かわいいって……」

真由「あら、若いからこその特権じゃないかしら。
   私はもうおばさんになっちゃったからなぁ」

悠馬「すごく綺麗ですよ」

真由「ありがと。お世辞でも嬉しいわ」

悠馬「ホントですって」

真由「ふふっ」

(間)

悠馬「あの……」

真由「どうしたの?」

悠馬「愚痴、零してもいい?」

真由「ええ」

悠馬「会社がつまんないんですよ。
   2年目も終わろうとしてるけど、楽しさが解らない。
   毎日同じようなことをしてるだけ。
   繰り返しの日常。
   惰性での生活に飽きたというか」

真由「会社なんてそんなもんかもしれないわね」

悠馬「そうなんですか?」

真由「私はやりたいことがあって、それができる環境にあるからいいんだけど
   友達の話を聞いてるとね。
   似たような愚痴をしょっちゅう耳にしてるわよ」

悠馬「はぁ……ため息をつくと幸せが逃げるっていうけど、
   ついちゃうんだよなぁ」

真由「ふふっ」

悠馬「なんで笑うんですか」

真由「私の若い頃にそっくりだなってね」

悠馬「からかわないでくださいよ。
   どんな仕事をしているんですか?」

真由「私?」

悠馬「やりたいことできてるって言ってたから」

真由「そうねぇ、詳しいことは言えないんだけど
   ちょっと特殊な研究をしてるの」

悠馬「企業秘密ってやつですか?」

真由「そんなところね」

悠馬「俺も転職しようかなぁ」

真由「その方がいいかもね。実は私も転職した口だし」

悠馬「そうなんですか!」

真由「まぁね。やりたいことって、どんなことなの?」

悠馬「笑わないでくださいよ?」

真由「どうして?」

悠馬「俺、SFに興味があるんだけど、その中にタイムトラベルってあるでしょ」

真由「え、ええ」

悠馬「タイムマシンを作ってみたいんですよ」

(間)

真由「そうなんだ」

悠馬「今もいろんな理論が提唱されてるけど、
   どれも実現するのは難しそうなものばかり。
   それにタイムパラドックスの問題もある。
   でも、夢なんです」

真由「現在の理論ではってことでしょ?
   まだ作れないと決まったわけじゃないわ」

悠馬「馬鹿にしないんですね!」

真由「どうして?」

悠馬「誰に話しても最初は夢があるねって言ってくれるけど、
   熱弁をはじめた途端に、冷めた目で見られるから……」

真由「生きていく上で夢や希望って大事なものなの。
   でも日々の生活もある。稼がないといけないからね。
   だから、妥協をしていく……
   ただ、生活基盤があるのなら、
   夢に向かっていった方が納得できるんじゃないかしら」

悠馬「! そう言ってもらえるの、すごく嬉しいです」

真由「研究ってね、設備が整っていないと難しいのは事実よ。
   でも、お金を湯水のように使えるからといって
   新しい発見ができるとは限らない。
   残念ながら私は直接は手伝えないけど、
   これからも相談には乗ってあげられるし、
   頑張って欲しいって思うわ」

悠馬「ありがとう! 俺、頑張ってみるよ!」

悠馬M(マスターにお金を払って店を出た。
    振り返って考えてみると、今日彼女に出会うのは必然だった気がする。
    会話の内容も、自分自身への結論も。
    何故かは解らない。
    それでも俺はがむしゃらに突き進むことを決めたんだ。

(間)

悠馬M(10年の月日が流れた。
    最低限の生活費を稼ぎながら、がむしゃらに勉強をした。
    大学の講義にも潜り込んだ。
    そして、それはあっけなかった。
    閃き、天啓。
    大発見というのは、こんなものかもしれない。
    世界に向けて発表することも考えた。
    しかし、無駄に有名人になるのは柄じゃない。
    俺は実験をすることにした。自分自身で。
    仮に失敗しても死んでも悔いはない……

(間)-----------------

真由M(しとしとと降る細やかな雨。
    私はとある場末のバーに居た。
    何故かここに来なければならない気がしていたから)

悠馬「隣、座っていい?」

真由「え? あ、はい」

悠馬「ありがとう」

(間)

悠馬「どうして私なんかと一緒に飲みたいと思ったんだろう。
   そう思っただろ」

真由M(思っていることを的中されて、目を丸くした)

悠馬「俺の恩人に似てるからだよ」

真由「恩人……ですか?」

悠馬「そう。迷って悩んでいた。ここにそっくりのバーでな」

真由「ここではなかったんですか?」

悠馬「どうなんだろうな、こことも言えるしそうじゃないとも言える」

真由「なんだかややこしいですね」

悠馬「ははっ、深く考えなくてもいいことかもしれないな」

真由M(その笑顔にどこか懐かしさともいう何かを感じた。
    昔から知っているような、これから知るような
    不思議な気持ちだったが、同時に安心感もある)

真由「そうですね」

悠馬「あの人の笑顔にやっぱり似てる」

真由「へぇ、もしかしてそっくりさん?」

悠馬「そうかもしれないけど、年齢はだいぶ違うんじゃないかな」

真由「似てるのに?」

悠馬「そ。10年前に出会ったんだけどね。
   彼女はその時30は超えてたんじゃないかなぁ」

真由「私はまだ23ですよ?」

悠馬「面影っていうとなんか逆の意味かもしれないけど、
   彼女の若い頃はこうだったんだろうなってね」

真由「ふぅん。歳を重ねた私かぁ、想像できないなぁ」

悠馬「とても美人だったよ?」

真由「へぇ……今の私は??」

悠馬「美人っていうよりは、かわいいって感じかな」

真由「ふふっ、嬉しい」

悠馬「若さが羨ましいなぁ。
   俺ははもうおじさんになっちまった」

真由「すごくカッコいいですよ」

悠馬「ありがと。お世辞でも嬉しいぜ」

真由「ホントですって」

悠馬「ははっ」

(間)

真由「あの……」

悠馬「どうしたの?」

真由「愚痴、零してもいいですか?」

悠馬「うん」

真由「会社がつまんないんですよ。
   2年目も終わろうとしてるけど、楽しさが解らない。
   毎日同じようなことをしてるだけ。
   繰り返しの日常。
   惰性での生活に飽きたというか」

悠馬「会社なんてそんなもんかもしれないな」

真由「そうなんですか?」

悠馬「俺はやりたいことがあって、それができる環境にあるからいいんだけど
   友達の話を聞いてるとね。
   似たような愚痴をしょっちゅう耳にしてる」

真由「はぁ……ため息をつくと幸せが逃げるっていうけど、
   ついちゃうんだよなぁ」

悠馬「ははっ」

真由「なんで笑うんですか」

悠馬「俺の若い頃にそっくりだなって」

真由「からかわないでくださいよ。
   どんな仕事をしているんですか?」

悠馬「俺?」

真由「やりたいことできてるって言ってたから」

悠馬「そうだなぁ、詳しいことは言えないんだけど
   ちょっと特殊な研究をしてるんだよ」

真由「企業秘密ってやつですか?」

悠馬「そんなところ」

真由「私も転職しようかなぁ」

悠馬「その方がいいかもな。実は俺も転職した口だし」

真由「そうなんですか!」

悠馬「まぁね。やりたいことって、どんなことなの?」

真由「笑わないでくださいよ?」

悠馬「どうして?」

真由「私、SFに興味があるんだけど、その中にタイムトラベルってあるでしょ」

悠馬「お、おう」

真由「タイムマシンを作ってみたいんですよ」

(間)

悠馬「そうなんだ」

真由「今もいろんな理論が提唱されてるけど、
   どれも実現するのは難しそうなものばかり。
   それにタイムパラドックスの問題もある。
   でも、夢なんです」

悠馬「現在の理論ではってことでしょ?
   まだ作れないと決まったわけじゃない」

真由「馬鹿にしないんですね!」

悠馬「どうして?」

真由「誰に話しても最初は夢があるねって言ってくれるけど、
   熱弁をはじめた途端に、冷めた目で見られるから……
   それに私が女だからってのもあるのかもしれない。
   そういったものは男の専売特許みたいにみんな思ってるから」

悠馬「生きていく上で夢や希望って大事なものだよ。
   でも日々の生活もある。稼がないといけないからね。
   だから、妥協をしていく……
   ただ、生活基盤があるのなら、
   夢に向かっていった方が納得できるんじゃないかな」

真由「! そう言ってもらえるの、すごく嬉しいです」

悠馬「研究ってさ、設備が整っていないと難しいのは事実だよ。
   でも、お金を湯水のように使えるからといって
   新しい発見ができるとは限らない。
   残念ながら俺は直接は手伝えないけど、
   これからも相談には乗ってあげられるし、
   頑張って欲しいって思う」

真由「ありがとう! 私、頑張ってみるわ!」

真由M(マスターにお金を払って店を出た。
    振り返って考えてみると、今日彼に出会うのは必然だった気がする。
    会話の内容も、自分自身への結論も。
    何故かは解らない。
    それでも私はがむしゃらに突き進むことを決めたの。

(間)

真由M(10年の月日が流れた。
    最低限の生活費を稼ぎながら、がむしゃらに勉強をした。
    大学の講義にも潜り込んだ。
    そして、それはあっけなかった。
    閃き、天啓。
    大発見というのは、こんなものかもしれない。
    世界に向けて発表することも考えた。
    しかし、無駄に有名人になるのは柄じゃない。
    私は実験をすることにした。自分自身で。
    仮に失敗しても死んでも悔いはない……

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