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​願いを叶えよう

比率 3:1:1

台本を使う前に【利用上のルール】をお読みください。

台詞内容の一部や語尾などをいじれば0:2:0でも可能です 。

利用上のルールにかかわらず、性別にあうように語尾などを自由に言い換えても問題ありません。

【簡単な人物像】
ゲームマスター(マスター):このゲームの主催者。音声のみで参加者に一方的に話しかける。

権藤ごんどう:性格が軽いフリーター。ナンバーワンホストを目指している。

兼氏かねうじ:大学浪人生。気弱なタイプ。東大合格を目指している。

彩峰あやみね:20代のOL。美貌を欲している。

肥後ひご:オタク。女の子にモテたいと思っている。

N:郊外の邸宅の大広間に4人の男女が集まっている。
  ここはとあるゲームが行われる場所だった。
  この場に居る人間のタイプはまちまちだが,
  それぞれに『切望』しているものがあった。
  このゲームは裏ネットで大々的に広告が打たれていたのだが,
  それを信じて集まったのは,『願望が強い』この4人だけだったのである。

マスター:よく集まってくれた。

権藤:どこに居やがる! 出て来い!

兼氏:あそこのスピーカーから聞こえているみたいですよ。

彩峰:スピーカーねぇ…どうして出てこないの?

マスター:君達の前に姿を現す必要はないからだよ。

権藤:てめぇ!

彩峰:スピーカー相手に怒っても仕方ないでしょう…

兼氏:そうですよ。

肥後:それに,何を言っても無駄みたいです。

権藤:ちっ…なんか納得いかねぇな。

マスター:そんな発言をするのであれば,
     君をゲームから強制離脱させてもいいんですよ?

権藤:くっ…わーったよ。わーった。
   で? 何をおっぱじめようってんだ?

マスター:広告にも書いてあるとおり,私は1人に対して,
     1つだけ願いを叶えてあげることができます。
     そう…何でもです。

彩峰:確かにそう書いてあったわね。

兼氏:でも,どうやってその『1人』を決めるんでしょうか。

マスター:決め方は至極単純です。
     今から3時間後にもう一度同じ事を問います。
     その時に,『この場に居る人間』の願いを叶えます。

兼氏:それってどういう…

マスター:そう。『手段は問いません』。
     話し合いであろうと,殺し合いであろうと。

彩峰:こ…殺し合いですって!?

権藤:ふ…いいだろう。絶対願いを叶えてくれるんだろうな?

マスター:もちろんです。そして,この場で人を殺しても,
     罪に問われる心配は一切ありません。

兼氏:問われないって…ありえるんでしょうか。

肥後:ここは隔絶された場所だし…
   死体処理すれば見つからないってことじゃないでしょうか。

彩峰:ちょっと…本気にしてんの?

肥後:はい…ボクが見るアニメとかでは,よくあるシチュエーションです。

彩峰:アニメって…

肥後:ゲームでもいいですけど。

権藤:どっちも似たようなもんだろ。

マスター:準備はいいですか? では『スタート』!

兼氏:え? いきなりですか!?

肥後:みたいですね…

権藤:おーい!

N:それっきりスピーカーから声は聞こえなくなった。

彩峰:バカバカしい! いくらなんでも『殺し合い』なんてゴメンよ!
   どこにマスターが居るのか,捜してやるわ!

兼氏:そうですね。僕も捜してみます。

権藤:おいおい…でもまぁ殺し合いは流石に物騒か。
   俺も捜してみる。

肥後:じゃあボクも…。
   こうしませんか? 30分後にもう一度ここに集合するというのは。

彩峰:いいわよ。

権藤:てめぇの言いなりになるのは癪しゃくだが,わかったぜ。

兼氏:僕もそれでいいです。

N:4人はばらばらに,邸宅の捜索を始めた。
  そして30分後,元の大広間に戻ってきた。

権藤:見つかったか?

彩峰:いいえ? あんたは?

兼氏:僕も…

権藤:そもそも,てめぇはなんでこのゲームに参加しようと思ったんだ?

兼氏:僕は…もう4浪してるんです。
   でも,なんとしても東大に入りたくて…

彩峰:呆あきれた。こんなゲームに参加している暇があるなら,
   勉強してればいいじゃない。

兼氏:でも,次は絶対失敗できないんです! だから…
   そういう貴女はどうなんですか?

彩峰:私? そんなの決まってるじゃない! 美貌よ!
   そうすれば『セレブ』な生活が送れるわ! 楽もできるし!

権藤:なんだそれ。

彩峰:なによ! そういうあんたはどうなの?

権藤:俺は『ナンバーワンホスト』になりてぇ!
   ただそれだけだ。それが夢なんだよ! わりぃか!

兼氏:ナンバーワンホスト…

権藤:てめぇみてぇな勉強の虫にはわかんねぇ世界だよ。

兼氏:なっ!

彩峰:ふぅ…勝手にやってて。
   ねぇ…そういえば,もう一人が来てないみたいだけど…

兼氏:そうですね。

権藤:逃げちまったとか?

兼氏:皆で捜してみます?

彩峰:このまま居なくなれば,候補者が減るとはいえ…
   ちょっと気持ち悪いものね…

N:こうして3人は一緒に肥後を捜し始めた。
  そして,とある部屋に入ったとき,3人は凍りついた。
  そこには,血まみれになっていた肥後が居たからである。

彩峰:ひっ!

兼氏:これって…

権藤:嘘だろ…

彩峰:どっちよ! どっちが殺したの!?
   …! あんたね! そういえば『殺し合い上等』みたいなこと
   言ってたもん。

権藤:ちょ…待てよ! ちげぇよ!

彩峰:でも…ばらばらで行動してたから…このひ弱な方ほうでも
   殺す機会はあったといえば…

権藤:そうだ! こいつだ!

兼氏:ちょっと待ってください! なんで僕が殺さなきゃいけないんですか!
   さっき貴女が言っていたように,『殺し上等』って発言していた
   この人なんじゃないですか?

権藤:なんでそうなるんだよ! それに…おめぇだって怪しいぜ?

彩峰:わ…私!? か弱い私にできるわけないでしょ!

兼氏:でも『拳銃』とか持っていたら,できなくもないです。

彩峰:拳銃!? そんなもの持ってないわよ!
   癪しゃくだけど,身体検査したっていいのよ!?

兼氏:でも…どこかに捨てたとか隠したとか…
   まぁ拳銃に絞ったところで,この人でもできることですけど。

彩峰:でしょ?

権藤:俺かよ! マジかよ!

彩峰:ホントにどっちが殺ったのよ!

兼氏:僕じゃないです!

権藤:俺でもねぇよ!

彩峰:でもどっちかでしょ?
   実際,ここに死体があるのよ!?

N:きっと権藤を見る彩峰。

権藤:俺じゃねぇ! よし,拳銃がどっかにねぇか,
   捜してくる!

彩峰:あ! ちょっと!

兼氏:行っちゃいましたね…

彩峰:でも…あんたかもしれない…
   いや! 一緒に居たくない!

N:こうしてまた3人がばらばらになった。

権藤:拳銃,拳銃っと…ねぇなぁ…
   あー,でも拳銃とは限らねぇのか。
   だとしたら,一体なんだろ。
   うーん…とりあえず適当に部屋を漁ってみるか。

彩峰:一体どうなってるのよ!
   まさか殺人が起きるなんて思ってもなかった…
   どっちが…どっちが殺ったのかしら…
   豪語していたホスト目指してる人?
   それともひ弱な受験生?
   順当に考えるのであれば前者だけど…でも…
   適当なものさえあれば,力は関係ない…?

兼氏:僕も武器を探した方が…いいのかなぁ…
   人が死んだとなると,気味が悪い…
   さっきマスターを捜した時には,そうでもなかったのに。
   改めて見ると,ちょっと薄暗いし…
   ………え?

N:各々おのおのが思うがままに行動していた。
  だが,殺人が起きたという不気味な邸宅に独りでいるというのは,
  存外に怖いものである。
  それぞれがそれぞれを捜し始めた。
  そして,権藤と彩峰が顔をあわせた。

彩峰:あ…

権藤:お…

彩峰:あれ…もう1人は…

権藤:まさか…

彩峰:え?

権藤:殺されたとか…

彩峰:まさか…

権藤:一緒に捜すか?

彩峰:ええ…

権藤:しっかし,人が次々消えるってのは,気味がわりぃな。

彩峰:そうね…でも,確かマスターが言ってたわよね。
   『1人に対して,1つだけ願いを叶えてあげることができます』って。

権藤:だからって,本当に人が死ぬとは思ってなかったし。

彩峰:ええ…

権藤:でもまぁ,さっきの奴が死んでるとは限らねぇ。
   ひょっとすると…俺達を狙ってるのかも。

彩峰:ちょっと…やめてよ…

権藤:でも,ありうる話だぜ?

彩峰:そりゃそうだけど…

N:暫くして2人が見つけたのは,変わり果てた兼氏の姿だった。

彩峰:もういや! あんたでしょ! 絶対あんたよ!

権藤:ちょっと待てよ! おめぇだろ!

彩峰:だって,こうして死体が2つ出てきてるのよ!

権藤:! ちょっと待てよ!

彩峰:何よ!

権藤:こいつ…本当に死んでるのか?

彩峰:どういうこと?

権藤:だって,ただ突つっ伏ぷしてるだけじゃねぇか。

彩峰:そうだけど…

権藤:確かめてみる。

N:権藤が兼氏の首の脈を探る。

彩峰:どう?

権藤:やっぱ死んでる…

彩峰:厭いやよ厭! いくら『何でも望みを叶えてもらえる』といっても
   その前に殺されるなんて,まっぴらよ!

権藤:おい! あ…行っちまった…え?

彩峰:冗談じゃないわ! 帰ろう!
   って…なんでドアが開かないのよ!

N:突然,権藤の悲鳴が邸宅に響いた。

彩峰:え…どういう…

N:振り返ると肥後が立っていた。

マスター:さぁ…そろそろこのゲームも終わりにしましょうか。

彩峰:ちょっと…どういうこと!?
   どうしてあんたが言ってることと,同じ内容のことが
   スピーカーから流れるのよ!?

肥後:簡単な事ですよ。ボクがマスターだからです。

彩峰:え…

肥後:不用意にも君達は,ボクの死を確認しなかった。
   そして不安に駆られ,ばらばらに行動している隙に,
   ボクがこの『消音処理を施した銃』で殺害。

彩峰:どうしてこんなことするのよ!

肥後:どうして? そんなの決まっていますよ。
   『アニメやゲームの世界を現実にやってみたいから』です。

彩峰:バカげてるわ! こんなことをして許されると思ってるの!?

肥後:見つからなければ問題ないと思いますが?

彩峰:でも!

肥後:貴女が最後の1人です。もう消音する必要すらないですね。

彩峰:待って!

N:『パーン』と乾いた音が邸宅に響いた。

肥後:くくく…はーっはっはっはっは!
   楽しい! こうでなくっちゃ! くくく…はっはっはっは!
   さて…次の獲物を釣る為に,また餌を撒くとしますか。
   おっと,その前に『死体処理』をしないといけませんね。

(終わり)

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