僕らは冒険者
シェード (♂)勇者
エルリック(♂)筋肉達磨
ズノ (♂)謎解き大好き
◆出会いと別れの酒場
シェード :クエストおつかれさまでしたー!
エルリック:おつかれぃ
ズノ :おつかれさま。
SE:乾杯のグラスが交わる
エルリック:飲もう! 疲れた!
ズノ :君は洞窟の謎解きとかしてなかったじゃないか。
エルリック:結果として目的のお宝を見つけられたんだから、
別にいいじゃないか。
シェード :今回はトラップがどうこうっていうよりは、
単純に面倒なだけだっただけな気もする。
ズノ :頭を使ったのは僕なんですからね。
まったく、少しは考えて欲しかったですよ。
シェード :いやー、そういったことは苦手でね。
エルリック:勇者を名乗ってるってのに、苦手はねぇだろ苦手は。
シェード :仕方ないだろ。苦手なんだし。
ズノ :そういうエルリックだって頭空っぽみたいじゃないか。
シェード :そうだそうだ。俺は一応考えようとはした。
ズノ :最初から放棄してましたよね。
エルリック:あ? いいじゃねぇか。得意な奴がやれば。
俺は周囲のモンスター片付けてたわけだし。
ズノ :この筋肉達磨。
エルリック:がっはっは。それは誉め言葉か?
シェード :俺もモンスター相手にしてたぜ。
ズノ :まったく……もしも僕が混乱させられてしまったら、どうしてたんですか。
シェード :混乱してなかったろ?
ズノ :仮の話です。
エルリック:こまけぇなぁ。おめぇ、よく神経質って言われるだろ。
ズノ :余計なお世話です。エルリックが大雑把すぎるだけ。
シェード :まぁいいじゃないか。
性格が偏るのもよくないと思って仲間を探したわけだし。
エルリック:お、いいこと言うねぇ。
ズノ :そういうシェードだって勇者のくせにぽわーっとしててさ。
シェード :ははーん、さてはズノ、酔ってるだろ。酒弱いねぇ。
ズノ :酔ってません!
シェード :そういうこと言う奴は、だいたい酔ってるんだよ。
ズノ :むすー。
エルリック:おいおい、男がそんな態度とったところで可愛さは微塵もねぇんだぜ?
ズノ :うぐ……
エルリック:パーティーに女の子とかいたら、すげぇ頑張れるんだけどなぁ。
ズノ :それには同意します。
シェード :え? なに。女の子を見つけて勧誘しろって?
エルリック:そういうこと。やっぱ華がねぇとな。
ズノ :大事なことです。
シェード :たしかに、それもそうだな。
ズノ :仲間を増やすなら僧侶系がいいですね。
結構前のクエストですが、難易度的にチャレンジしてみたら、
ひどい目に遭いましたから。
エルリック:あんときゃ、マジでヤバかったよな。全滅しかけちまったし。
ズノ :このパーティーだと回復系が使える人がほとんどいないようなものですからね。
シェード :まぁ……パーティーで回復専門の人は居た方がいいよな。
エルリック:僧侶の女の子か。ちっこい可愛らしい子を希望するぞ。そんで愛でたい。
ズノ :うわ……ロリですか。
エルリック:んだと! いいじゃねぇか可愛い子!
ズノ :僕はお姉さんタイプがいいなぁ。
エルリック:ははーん、だからさっきみたいに可愛いとか言われるようなしぐさをするわけか。
ズノ :綺麗なお姉さんに介抱されたいですから。
シェード :わかる。ちょっとエッチな感じの美人系とかいいよな。
そういう人を探そうか。
エルリック:待てよ! マスコットみたいな子も可愛いだろ?
シェード :んー。それも捨てがたい。パーティーが明るくなるよな。
エルリック:だろ?
ズノ :犯罪者っぽい思考回路してる奴め。
エルリック:ノータッチだからいいんだよ!
シェード :俺は頭をなでなでしたい。
ズノ :シェードさん。
シェード :ごめんなさい、通報しないでください。
エルリック:おめぇだって、やらしいこと考えてるだけじゃねぇか。
このエロ坊主。
ズノ :心外ですね。エルリックも、ノータッチとは思えませんけど?
エルリック:うぐ。
シェード :わかったわかった。
そもそも、パーティーに誘うにしてもそれだけを基準には選べないし、
他に譲れないポイントとかある?
ズノ :眼鏡。
エルリック:は?
ズノ :眼鏡をかけた綺麗なお姉さん。以上。
シェード :澄ました顔で大胆に言い切ってませんかね。
エルリック:眼鏡なんて戦闘中に割れたりしたら困るわけで。視力は大事だぞ。
シェード :あ、それなら戦うときはコンタクトにしてもらえばいいんじゃないか?
ズノ :ダメです。
シェード :え?
ズノ :わかってないですねぇ、シェード。それでも勇者ですか?
シェード :勇者関係ねぇだろ。
ズノ :眼鏡をしてないときに、周囲がよく見えなくて
おろおろしちゃって頼ってくるとか、最高です。
エルリック:おめぇの性癖そのまんまかよ。
ズノ :いいじゃないですか。
シェード :そりゃ、ツンデレというか綺麗なお姉さんの
デレポイントが増えるのはとても捨てがたいことではあるけど。
ズノ :わかってもらえればいいんですよ。
エルリック:ちょっと勝気な女の子がニコっと可愛らしく笑うのだって、
すげぇ眩しいだろ?
ときどき背伸びしてお姉さんみたいな態度とったり
介抱されたりとか、もう堪んねぇよな。
シェード :あ、それも捨てがたい。
ズノ :だいたい、そうやって優柔不断なところがいけないんです。
勇者のくせに。
シェード :勇者の武器は勇気だから、いいんだよ。
ズノ :なんですか、その理論。
エルリック:ま、間違っちゃいねぇと思うがな。
剣術では戦士に勝てねぇだろうし、魔法だって魔法使いには敵わねぇ。
シェード :そういうこと!
ズノ :無駄に胸を張らないでください。なんか癪なんで。
エルリック:わかるわー。
シェード :んだよ、それ。ひっでぇな。
ズノ :それより、気づいていますか?
エルリック:当然だろ。
シェード :わざわざ酒場でまで情報収集とは、ご苦労なこった。
ズノ :さして強くもないのにつっかかってくるから、
少々遊んでしまったのが悪かったのかもしれません。
シェード :まったく。人間の敵は人間ってか?
エルリック:ちげぇねぇ。
シェード :次のクエストは決まったけど、それでいいか?
わかりやすくボードに貼っつけてくるだろうし。
ズノ :もちろん。
エルリック:異論はねぇぜ。
◆翌日
ズノ :クエストボードにどう書かれていました?
シェード :女僧侶からの依頼だったよ。
エルリック:ほぉ。
シェード :自分にも、どの勇者とパーティーを組むのか選ぶ権利があるから、
指定された物を持ってきてくれたらだとさ。
エルリック:お高くとまってんねぇ。
相当な高レベルじゃねぇと、どの口がってぶっ叩かれそうだ。
ズノ :実際はおびき出すための餌なんでしょうけどね。
シェード :ま、そんなとこだろうな。しっかし、そんなに恨まれてるんかねぇ。
あんまりにも弱い悪党だったから、手を抜いてたのがバレてたとか?
エルリック:さぁな。どっちにしてもボコボコにしたわけだし、
恨むなという方が無理なんじゃねぇかな。
ズノ :でしょうね。受注は済ませましたか?
シェード :もちろん。ひと暴れしようぜ。
もしかしたら、頭領とかがいいアイテムを持っているかもしれんし、
国の秘宝を悪党に盗まれたって話もあった気がする。
別の国のクエストだったはずだけどな。
エルリック:ちょうどいいな。
シェード :んじゃ、行きますかね。
◆クエスト指定の洞窟
ズノ :おーい、二人とも大丈夫ですか?
エルリック:おう。問題ねぇ。
シェード :落盤を利用して分断か。わかりやすい罠だ。
ソロになるけど、本気だしていいからな。最後の部屋に集合ってことで。
ズノ :了解。
エルリック:了解。
◆
シェード :さて、俺の相手はお前か。見た感じ頭領っぽいけど。
お、笑ってるな。正解か。それだけじゃないって?
仲間の心配をしたらどうだって? そりゃどういうことだ。
ははーん、それぞれ魔法を封じて戦う部隊と剣術を封じて戦う部隊だってことか?
なるほどね。だが、全然心配はしてねぇよ。
それより自分の心配をした方がいいと思うけどな。
悪いけど、俺は伊達に勇者名乗ってるわけじゃないから、
その辺の悪党に負けるほど弱くはないぞ?
ズノ :お見事。君たちは僕の魔法を封じることに成功したね。
あの酒場での会話をしっかり盗み聞いたわけだ。
謎解きを担当したのはたしかに僕だよ。そういうのが好きなものでね。
だから、魔法を封じてしまえば楽勝だって? それはどうかな。
エルリック:お、剣術を封じてきたのか。いいねぇ、そういうの嫌いじゃねぇ。
使い物にならなくなった剣は鞘に納めておいたらいいんか?
見たところ鎧でがっちり装備を固めてるみてぇだし、
拳で戦うってのも分が悪そうだからな。してやったりってか?
シェード :戦う前にひとつ教えてくれ。とある国の秘宝を盗んだのお前だな?
そうか。それは助かる。
ついでに別のクエストを終えられるし、
もしかしたら後々必要になるものかもしれないからな。
それにしても、この作戦に随分自信あるようだけど、残念だったな。
◆酒場
ズノ :あっはっはっはっは、愉快愉快。
エルリック:頭領が伝説の盗まれたお宝を持ってるのもラッキーだったな。
悪党の討伐も別のクエストにあったみたいだし、一石二鳥だ。
シェード :これがあれば、ストーリーを進められそうでもある。それにしても。
ズノ :愚かでしたね、敵さんたち。
エルリック:まったくだぜ。
シェード :人を見た目で判断したのが間違いだったんだよ。
エルリック:たしかに俺は筋肉達磨ではあるが、剣術はそこまで得意じゃねぇんだよなぁ。
腰に差してる剣も、そんないいもんじゃねぇし。
ズノ :まさか僕の魔法を封じて勝利宣言してくるとは思いませんでしたね。
そりゃ、考えることは好きですけど。腰の剣は飾りって思ったんですかねぇ。
シェード :エルリックは魔法使いだしズノは戦士だからな。すっかり騙されやがって。
ズノ :謎解きが好きな戦士。
エルリック:圧倒的魔法力でねじ伏せる脳筋魔法使い。
シェード :なんか、発想が悪者っぽいけど、これでも勇者。
ズノ :それにしても、このクエストがストーリー進行にかかわるとすると、
普通だったら苦戦しそうだね。
エルリック:まぁな。システム管理者もいやらしいことをしてくれるぜ。
シェード :あっさりコンテンツクリアされちゃっても困るからなんじゃねぇか?
それより、僧侶なんだが。
ズノ :綺麗なお姉さんに癒されたいです! こう、包まれるみたいに!
エルリック:ちっこくて可愛い子は譲れねぇな。
ズノ :どうせ、俺が攻撃系も教えてあげるよデュフフフフとかってやるんでしょ?
おまわりさーん、こいつです。
エルリック:あ? デュフフフフとか言わねぇよ。
おめぇだってショタコンっぽいお姉さんにエッチなことさせようと企んでるんだろ。
この変態。
ズノ :ロリよりはマシです。
エルリック:この野郎、黒焦げにするぞ!
ズノ :その前に切り刻んであげますよ。
シェード :あのさ。
エルリック:あんだよ。
ズノ :なんですか。
シェード :いつまで経っても和解しなさそうだし、俺がもう目星つけてきたよ。
レベルすげぇ高かったし。
エルリック:ほう。で、それはちっこいくて可愛いか?
ズノ :シェードの目に叶うなら戦力的には問題なさそうですが、綺麗なお姉さんですか?
シェード :すげぇ言いにくいんだけど、全身タイツのおっさんだ……
ぎゃああああああ、ごめんなさーーーーーい!
俺勇者でリーダーなのに、なんでこんな目に遭ってるのおおおおおおおおお!